胸打たれる男女の絆

 2008-02-27
  山東省でこういう事故が起こった。色々と途中経過があるのだがそこは割愛するとして、要するに列車事故である。16歳の少女が列車から降りるためにドア際に寄ろうとしていたのだが、列車が完全に止まりきっていなかったにもかかわらずドアが開いてしまい、しかもときに後ろから押されて足がレールの上にのっかるような形で転落してしまい、そして最悪なことに車輪が両足を轢いてしまったのだ。

  少女側は治療費等を含めて約89万元の請求を鉄道会社に訴えたのだが、鉄道会社からの回答は300元しか賠償する必要がないというものだった。事故が発生したのは2007年3月であり、その時点で有効であった《列車とその他車両の接触及び鉄道外人員傷亡事故処理暫定規定》(なんと1979年に公布されたもの)に基づいてはじき出した数字だというのがその根拠である。もちろん鉄道会社には非がないというのを前提としている。30年近く前の通達である。この事故の半年後の2007年9月にはあらたに《鉄道交通事故応急救援及び調査処理条例》が公布されており、このような事故の場合の鉄道会社の賠償責任最高限度額が15万元にまで引き上げられた。しかしながら、事故発生当時は後者が公布されていなかったためその適用は難しいとの見方がされているようだ。

  以上だけ見ると賠償金の金額があまりにも少ないというところに焦点が集まるだろう。わずか16歳の少女が両足を切断する羽目になった金額とはとても思えない。もちろんお金の話も大事だろう。しかし、この記事を見て私がもっとも印象に残ったのは実はお金の部分ではなく記者とこの少女とのやり取りの部分である。

  記者 「これからどうしていくか考えたことがありますか?」
  少女 「彼(恋人)にずっと背負って行ってもらいたくないけれど、彼はずっと私を背負ってくれるといっている。」

  そう少女が答えた直後、少女と彼の目が合い彼は力強く頷いたのであった。

  いつもなら締めの言葉を何とかして考え出すのだが、今回ばかりは勘弁願いたい。あまりにも悲しい話で言葉にならないのだ。

 
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プロフィール

呉 明憲 (meiken@jris.com.cn)

Author:呉 明憲 (meiken@jris.com.cn)
1992年3月 神戸大学経営学部卒業。
1992年4月 住友銀行(現三井住友銀行)入行。
2002年11月 三井住友銀行上海支店へ駐在。
2003年1月 キャストコンサルティング(上海)有限公司へ派遣。
2005年1月 日綜(上海)投資コンサルティング有限公司設立に伴い同社副総経理に就任。

住友銀行入行後、ほぼ一貫して法人業務畑を歩む。上海支店赴任後は中国ビジネスコンサルティングに特化し現在に至る。

日中経済貿易センターJCCNETコメンテーター
財団法人海外職業訓練協会(OVTA)国際アドバイザー

経歴と全く関係ないが週に一度のキックボクシングの練習は欠かせない。

主な執筆
「呉明憲コンサルタントのナレッジストリーム「(『bros』)
「中国税関実務AtoZ」(『The DailyNNA』(中国総合版))
「中国における企業再編」(『bizpresso』)
日綜(上海)投資コンサルティング会員向けニュースレター(JRIS NEWS、一問一答)
週刊エコノミスト2008年4月8日号(高齢化社会の到来で注目のシルバー産業)
週刊エコノミスト2008年8月5日号(ニート、パラサイト化する中国「80後」世代の生態)
週刊エコノミスト2008年11月4日特大号(ネット通販の商品を職場で受け取る中国人)

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