解雇に伴う賠償金135万元なり!

 2008-10-21
  いやあ、それにしても135万元とはすごい金額だ。今年の7月にシーメンスで発生した事例がメディアで紹介されていたのを見かけ、なかなか面白い記事だったのでここで紹介することにする。主人公はシーメンス社と解雇された従業員の謝さん(仮名?)である。

  謝さんは1995年6月に上海シーメンス移動通信有限公司で販売担当者として入社し、2003年10月にシーメンス(中国)有限公司の安徽省総経理に就任した。ところが、今年の4月18日に突然特段の理由なく解雇されてしまったのだ。これに対して謝さんは浦東労働争議仲裁院に訴えを行い、シーメンスとの労働関係を復活することを要求したものの、シーメンス側より拒否された。その後謝さんはシーメンスに300万元の補償要求を行った。話し合いの結果、双方は135万元を補償することで協議の一致にいたったのである。

  《労働契約法》第87条において、「雇用単位が本法の規定に違反して労働契約を解除または終止する場合、規定する経済補償標準の二倍を労働者に賠償金として支払わなければならない。」とある。一方で、高額所得者に対する経済補償には二つの上限が定められており、具体的には《労働契約法》第47条第2項で「労働者の月給が雇用単位が所在する直轄市、区を設けている市級人民政府が公布する当該地区の前年度の従業員月平均給与の三倍を上回る場合、経済補償を支払う基準は従業員の平均月給の三倍の金額を支払い、経済補償の年限は最高で十二年を超過しない。」とある。ただし、このケースにおいては謝さんとシーメンスがすすんで協議を行った結果135万元という補償金額で折り合いが付いたのである。
 ここでは謝さんの給与水準まで紹介されていないものの、安徽省の総経理というポジションについていたこともあり、相応の水準にあったのだろう。では理論的に本ケースの場合支払うべき金額をはじいてみよう。

 (1)金額基数
  安徽省労働補償庁によると安徽省の2007年の平均給与は22,180元、月間に引きなおすと1,848元だ。高額所得者はこの3倍が経済補償計算の基数なるが、謝さんはおそらく高額所得者の範疇に入っていたことから、安徽省平均月給の3倍である5,544元が基数として計算することにする。

 (2)年限
  謝さんはシーメンス関連の二つの会社での通算勤続年数が12年10ヶ月なので、経済補償計算に当たって高額所得者の上限年限である12年をベースに計算する。

 (3)賠償金
  理由なき解雇の場合、経済補償標準の二倍を労働者に賠償金として支払うことになる。

以上の(1)から(3)をもとに補償金額を単純に計算すると、5,544元×12ヶ月×2倍=133,056元という数字がはじき出される。135万元は理論的にはじき出される数字のなんと10倍以上だ。

  両者の間で何があってどのような話し合いが行われたかについては定かではないが、とにかく凄い金額で決着が付いている。逆に言うと同様のリスクが自らに降りかかるかもしれないという心の準備が必要かもしれない。人事あるいは労務管理はちょっとしたことで大きな代償を払う場合があることを肝に銘じておくべきだろう。

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コメント
その1
労働法は外国人にも適用されます。ただし、外国人には1996年に公布された《外国人が中国で就業することの管理規定》というものがあり、こちらの内容も確認する必要があります。例えば、この規定では「労働契約の期限は最長5年を超過してはならない。」とあるように、外国人は無固定期元労働契約の対象外となっています。その他、地方通達ではありますが、「上海市労働局:《外国人が中国で就業することの管理規定》の貫徹に関する若干意見」というものがあり、この第16条で、「雇用単位と雇用が認められた外国人との間の雇用関係解除に関連する双方の権利義務に関連することは、労働契約で約定する。」とあり、これを根拠に上海では約定に書いてありさえすれば雇用側が一方的に解雇するのも認められるとの考え方がある(実例として企業側の一方的な契約解除に対して外国人労働者が訴えを起こして敗訴した例あり)一方で、北京では双方の自由意志による約定は尊重すべきながらそれには制限があるべきで法律規定に違反してはならないという考え方があり、要するに都市によって理解が異なったりしています。このあたりは個別個別で要確認ですね。

その2
雇用契約を中国外で締結するというのは中国人・外国人のいずれのケースでもありますが、外国人について就業手続きに当たりましてどのような書類が必要か上海についてみてみます。この中で。「雇用単位と被雇用外国人が締結する労働契約または雇用協議(コピー)(国外派遣且つ労働報酬等が国外から支払われるのに属する場合、及び渉外プロジェクトにおける技術人員が雇用単位と労働契約または雇用協議を締結しない場合、国外派遣単位が相応の証明資料を発行し、証明資料は労働報酬の支払い者、被雇用者職位と雇用期限が明確であること)」が必要とされております。外国人の場合は駐在員の場合はともかく現地採用の場合通常は労働契約を締結することになりますので、就業手続きの中で労働契約を提出することになり、雇用契約を中国外で締結するようなケースは生じないと思います。まして駐在員扱いにしようとすると社内ルール的にコスト負担が多くなってしまうケースが多いと思いますので、コストをおさえる目的であればやはり現地採用を選択するでしょう。中国人の場合で日本採用にしたとしても、もし揉め事が発生した場合労働者保護の観点から労働法や労働契約法を参照して判断が下されるような気がしますね。あくまで個人的な意見ですが。
【2008/10/23 00:29】 | ご #- | [edit]
その1
労働法は外国人労働者にも適用されるの?(たぶん適用されるんだろうけど・・・東夷南蛮西戎北狄は禽獣で人間じゃないから適用外なんてさすがにもう言わんよね)
その2
雇用契約が中国外で締結されている場合は、適用外なのでしょうか?
もしそうなら、日本の最低賃金以上の条件で雇用する労働者は日本本社採用で中国勤務にしておけば・・・なんて考える会社も・・・
日本の会社はやらんやろうが、えげつない国の会社なら中国以外の労働者の権利が余り保護されない国の現地法人採用で中国駐在という荒業をつかうかも・・・
【2008/10/22 09:02】 | くま #- | [edit]












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プロフィール

呉 明憲 (meiken@jris.com.cn)

Author:呉 明憲 (meiken@jris.com.cn)
1992年3月 神戸大学経営学部卒業。
1992年4月 住友銀行(現三井住友銀行)入行。
2002年11月 三井住友銀行上海支店へ駐在。
2003年1月 キャストコンサルティング(上海)有限公司へ派遣。
2005年1月 日綜(上海)投資コンサルティング有限公司設立に伴い同社副総経理に就任。

住友銀行入行後、ほぼ一貫して法人業務畑を歩む。上海支店赴任後は中国ビジネスコンサルティングに特化し現在に至る。

日中経済貿易センターJCCNETコメンテーター
財団法人海外職業訓練協会(OVTA)国際アドバイザー

経歴と全く関係ないが週に一度のキックボクシングの練習は欠かせない。

主な執筆
「呉明憲コンサルタントのナレッジストリーム「(『bros』)
「中国税関実務AtoZ」(『The DailyNNA』(中国総合版))
「中国における企業再編」(『bizpresso』)
日綜(上海)投資コンサルティング会員向けニュースレター(JRIS NEWS、一問一答)
週刊エコノミスト2008年4月8日号(高齢化社会の到来で注目のシルバー産業)
週刊エコノミスト2008年8月5日号(ニート、パラサイト化する中国「80後」世代の生態)
週刊エコノミスト2008年11月4日特大号(ネット通販の商品を職場で受け取る中国人)

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